受賞作の『放課後死体クラブ(仮題)』は、昨年のYA・エンタメ分科会に提出した作品です。当時は主人公に寄り添えず、どう直したらいいものかとお手上げだった作品に、世話人の宮下さん、近江屋さんを始め、分科会の皆さまが温かくも厳しいご意見、アドバイスをくださいました。希望の光が見えたことがうれしくて、季節風大会から帰ると、すぐ手直しに取りかかりました。推薦作として季節風一六三号に掲載されたものからさらに改稿した作品を、この度、第66回講談社児童文学新人賞に選んでいただきました。
	
 私の創作人生を振り返ったときに欠かすことのできない存在が、季節風会員の小金先生です。社会人になって創作から遠のいていたある日、小学一年二組の同窓会が催され、担任だった小金先生と再会しました。勉強も運動もできず、おまけに超引っ込み思案でどうしようもなかった私に、「書く」という武器を見つけてくださった先生です。小金先生は毎日、日記を上手に書けた子に手作りの賞状を渡されていました。賞状をたくさん受け取った小学一年生の私は、漠然と「書く人になりたい」という夢を持つようになりました。
	
 大学で児童文学創作ゼミに入っていたことをお伝えすると、小金先生は季節風大会に連れてきてくださいました。会場だった本郷の旅館の風合いも相まって、そこは現実から遊離した場所でした。創作にかける皆さんの熱気にあてられ、濃厚な時間を過ごす中で、「児童文学作家になりたい」という夢が再び芽生えました。講談社児童文学新人賞に初めて応募したのは、翌年のことです。
	
 結果が出せないまま年月が経つにつれ、「過去の作品より、もっといい作品を書かないと」という焦りにとらわれ、自分で自分の作品に失望して、しばらく書けなくなった期間がありました。正直、休んでいる間は楽でした。筆が進まなくても焦らなくていい。自由時間が沢山ある。しかし、創作から目を背けていることに対する罪悪感と焦燥感が、ずっと胸の中でくすぶっていました。
	
 二〇二三年の年明け、覚悟を決めて創作を再開し、リハビリのように時間をかけて短編を書き上げました。ありがたくもその作品を季節風に掲載いただいた際、執筆者紹介欄で「久々の投稿、編集委員一同喜んでいます」というお言葉をかけていただき、なんて温かい場所だろうと胸が熱くなりました。
	
 受賞できたのは、長い間支え、励ましてくださった季節風の皆さまのおかげです。本当にありがとうございました。ようやくスタートラインに立つことができました。今後は一人でも多くの方に物語を届けることができるよう、精一杯食らいついていきたいと思います。