受賞のことば

石川 純子

 作品のアイデアも浮かばずにモタモタとして過ごす日々。ある日、昔の作品を引っ張り出して読んでみると、以外におもしろい? なんちゃって、自画自賛、毎度勘違いもはなはだしい私は、調子に乗ってどこかに出してみようと、さっそく公募サイトを見ていると、枚数的にぴったりの応募先を発見。
 「青い満月とオモニ」は、私が小学生の低学年の頃、なかよしになった朝鮮部落のオモニが、北朝鮮帰還事業で、家族で帰国するまでの出会いと別れを書きました。いつもは、汚れた服を着て働いていたオモニが別れをつげにきた夜。青い満月の下で真っ白いチマ・チョゴリを着て誇らしげに立っているのを見て驚いたものです。「竹さんは今夜も」は、創作を始めて間もないころに書きました。戦地に行って帰らない息子を待つ年老いた父親と孫の、行き倒れの復員兵とのやはり出会いと別れの物語です。優駿のエッセイ賞の「おばちゃんのエール」は、私の人生で、出会った馬たちとの物語です。競馬に行く訳ではないのですが、ふとした時の馬とのかかわりを書きました。昔の歌謡曲にある「会うが別れの初めとは、知らぬ私じゃないけれど……」人生は、出会いと別れの繰り返し。でも、別れても一生忘れられない出会いもあります。いつか、子どもたちの心に残るそんな作品を書きたいと願っています。一年に一度しかお会いできないけれど、季節風大会で講師の方や仲間の方に、厳しくも暖かいご批評をいただき、ゆるんだ頭に刺激を受けています。平成もまもなく終わり、昭和はますます遠くなります。でも、忘れてはならない事、伝えていかなくてはならない事があるはず。それに向かって書いて行きたいと思います。

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