『空打ちブルース』受賞のことば

升井純子

 このたびは大きな大きな賞をいただき、ありがとうございました。
 何度そう言っても、心の中の「ありがとう」に近づきません。わたしは小さいころから漫画ばかり読んでいました。
 なかでも講談社の「少女フレンド」がお気に入りで、毎週毎週、その雑誌を買っていました。
 ある日、連載の漫画と漫画の間に単行本の発行PRのページがありました。
 「おもしろそう」と思い、両親に「この本、読みたいな」とお願いすると、両親は「やっと活字の本にめざめたか」とすぐに買ってくれました。
 それが、「ついてないんだ。ぼくら六年三組の担任は、キリコになっちまったのさ」でした。
 夢中になって読みました。
 作者が誰とかタイトルがなにとか、そんなことすっとばしてぐいぐいとその物語にひきこまれていきました。
 講談社の新人賞佳作受賞の作品でした。わたしと児童文学のであいはそれでした。
 そんなわたしが大人になって、書くことになりました。「ついてないんだ」の世界をなぞりたくて、二十余年、細く長く書き続けてきました。
 その間、迷ったり苦しんだりもしましたが、多くのよき先輩・友人たちが支えてくださりました。
 今回は多分誰かが神様に耳打ちしてくださって、「あらぁ、あの人、まだ書いていたのね」と、神様が根負けされたのに違いありません。
 きっと、そうです。書き続けることができた、すべての環境に感謝いたします。すばらしいであいに感謝いたします。
 ありがとうございました。

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