受賞のことば

大野 圭子

 季節風さま
 ごぶさたをしています。お元気そうで安心しています。
 そうなんです。わたしの二冊目の本が去年の五月三十日に出版されました。それだけでもうれしかったのに“第二十四回読書感想画中央コンクール”の指定図書にも選ばれたのです。タイトルは『おとうちゃんの音や!』という神戸弁まるだしの物語です。ある日、ふと、よーーく知っていることを、書くのはどうだろう、と思ったことがきっかけでした。つらかったのに何食わぬ顔をして家のドアを開けた日のこと、座布団の膝小僧の汗のあと、ポマードを塗ったくった手で桐のたんすにつけた小さな手形、まだ硬かったグラジオラスをサックサックと切ったこと、大きな井戸のある家の不気味な静けさ、雨の日、一発づつ叩き合ったほっぺたのこと。勇気りんりんだったあの子や寂しい時はいつも歌っていたあの子のこと。
 季節風さまはよくご存じでしょう。思えば、季節風大会に初めて参加したのが、一九九八年でした。その間、二〇〇七年に絵本『あいしてます』が出版されたとはいうものの、なんと十六年が経っていました。
 それでも、見放さずに「次も待っていますよ」とやさしくきびしく声をかけてくださる。本当にありがとうございます。まずは、お礼まで。

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