受賞のことば

田邊 奈津子

 東奥文学賞は、青森県の東奥日報社が創刊百二十周年を記念して設けた賞です。地域の大人向けの小説公募ですので、名ばかり会員の私が季節風にて受賞の言葉を陳べさせていただくのは、おこがましいことと思います。
 そんな私に、ぜひ喜びの声をと勧めて下さったのは、七月に仙台市でお目にかかった高橋秀雄先生でした。高橋うららさんの児童文学サイトをきっかけに始まった「東北オフ会」。私が参加できる数少ない会合なのですが、おふたりの高橋先生は毎年、東北の書き手たちを激励して下さり、このたび「第二回東奥文学賞」の作品集を手渡すことができたのでした。
 原稿百枚の受賞作は、青森の主婦の目線から、震災以降に生きる道を模索する農家を描いたものです。一次産業をないがしろにすることは、庶民の命に直結する事ではないか。その気持ちから書かずにいられないテーマでしたが、大賞を射止めるとは予想外で、地元紙に連載されたときは胸にこみ上げるものがありました。ふり返れば、私が書き続けてこられたのは、やはり児童文学のおかげにほかなりません。わが子に読み聞かせた童話の数々が文学への扉となったのですから。
 それから、東日本大震災の際には、皆さまから過分なお見舞いを頂き、誠に有難うございました。動揺と不安のさなかにいたとき、お電話も頂戴し、温かなつながりに感謝しております。

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