受賞のことば

安田 夏菜

 今年の新春号に、「受賞の言葉」を書かせて頂きました。あの時は、「上方落語台本募集」に入選し、児童文学とは関係のない番外編でしたが、ご厚意で書かせて頂いたのでした。今、読み返してみたら、こんなことを堂々と書いています。
「願わくば、今度は本業(?)の児童文学に落語を取り入れ、子どもたちに笑顔を運べますように。それが現在の私の夢です」
 まさか、このこっぱずかしい言葉が、「講談社児童文学新人賞佳作」という形になろうとは。やっぱり夢は、恥ずかしげもなく言いふらしておいたほうが、実現しやすいのかもしれません。
 賞を頂いた「あしたも、さんかく」は、二〇一一年の、季節風琵琶湖道場でお世話になった作品です。大好きな、桂雀々さんのCDを聞いているうちに思いつき、かーっと火がついたようになって、十日あまりで書き上げました。上方落語「さくらんぼ」を題材にしたお話です。
 落語には、児童文学にも通じる「向日性」があります。がんばっているのに、なんか報われていない人。社会的な成功からは、どうも縁遠そうな人。そんな人たちが、アホなことをしながら、なにやら精一杯生きている。
 以前、若手の噺家さんの独演会に行った時、プログラムにこんな言葉が書かれていました。
「ダメな人が好きです」
 そう、落語に出てくる登場人物は、たいていちょっと「ダメな人」そして演じる噺家も、やっぱりちょっと「ダメな人」さらに、それを嬉しがって聞いているお客も、やはり「ダメな人」の仲間かもしれません。
 けれども、ダメなものどうし、寄り集まって、「あはは」と笑う。ちょっとの「あはは」に一日の憂さを忘れ、さあ明日もなんとか乗り切るぞと、もやしのように首をもたげる。明るい方へ明るい方へ、ひょろひょろと伸びていこうとする人たちのことを、私は尊いと思います。
「あしたも、さんかく」の中にも、そんな「向日性」を込めました。賞は頂きましたが、まだまだスタートライン。もやしのように、私もひょろひょろと、成長していくことができますように。

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