受賞のことば

佐藤 まどか

 厳格なロックダウン生活を送っていた私は、伊日英のニュースにかじりついては泣き、怒り、鬱々としていました。普段から引きこもった生活をしているのでロックダウンは平気ですし、住んでいる所は安全地帯です。が、社会の不幸は自分の不幸。亡くなる人は最後に家族にも会えないままと聞いて、もう悲しいやら悔しいやら、ため息ばかりの毎日でした。
 そんなある日、受賞のお知らせを頂きました。実は、デビュー作になった十四年前の「日産童話と絵本のグランプリ」と、八年前の「うつのみやこども賞」以降は、いくつかの賞にノミネートして頂いては滑ってきたので、アカデミックな賞には縁がないと思っていたんです。予期せぬ受賞にあたふたし、陸に打ち上げられた深海魚のごとく、口をパクパクさせました。とはいえ、実感もわかないし、そもそもこんな時に喜んでもいいの? なんて悶々としていたら、季節風の仲間が児文協のHPで気づいてくれて、先にツイッターで発表&お祝いをしてくれたのです。仲間っていいなぁ。
 児童文学の世界には、作家としても人としても立派な方々が大勢いらっしゃいます。一方、私なんぞは品行方正じゃないどころか、教師のパワハラに反抗してグレていた事すらあります。家庭もかなり複雑だった上に、本人の性格も複雑怪奇で、しばしば自分でも手に負えません。しかも在イタリアのプロダクトデザイナーのくせに児童文学を書き始めた変わり種です。つまり、子どもの頃もマイノリティ、八十年代後半のイタリアでは人種そのものがマイノリティ、女でプロダクトデザイナーは当時マイノリティ、児童文学界でもやっぱりマイノリティ。あらら、マイノリティのオンパレード。
 そんな変わり種が書いた『アドリブ』に、歴史ある協会賞を授与して頂けたのには、何か意味があるのかもしれないと考えました。あ、きっと、これだ。「こら、ふてくされてないで、しっかりマイノリティの声を届けやがれ!」
 はい。覚悟を決めてがんばります。本当にありがとうございました。

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